自己破産をするにあたり、仕事や家族への影響を懸念される方は多いことと思います。
自己破産は、借金返済の義務が免除になる点が最大のメリットです。一方で、実生活が大きく変化するようなデメリットがあるなら、自己破産はしたくないと考える方もいるでしょう。
そこで今回は、自己破産で生じるデメリットをわかりやすくまとめました。所有財産や仕事、家族への影響も詳しくお伝えしているので、自己破産を検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
自己破産とは|すべての借金の支払い義務が免除される手続きのこと
自己破産は、返済が困難になった借金の支払い義務を免除してもらうための手続きです。
自己破産をすると、いまある借金がすべて帳消しになります。したがって、長く借金に苦しんでいる方が生活を再建するにはもっとも有効な手段と言えるでしょう。
自己破産する理由で多いものには、
- 低所得(収入の減少)
- 病気やケガ
- 住宅・自動車ローン
- 浪費
- 借金の肩代わり
などがあります。
免責不許可事由(借金の免除が認められない理由)とみなされない限り、基本的にはどのような理由でも自己破産が可能です。仮に免責不許可事由に該当する理由であっても、自己破産に至った経緯によっては免責が許可される場合もあります。
ただし、ギャンブル・飲食による過度な借金、所得隠しや虚偽申告などが発覚すると免責は認められません。これはつまり、自己破産はできずこれまで通り借金の返済が続いていくことを意味します。
このほか免責不許可事由については、破産法第252条1項/免責許可の決定の要件等の中で以下のようにまとめられています。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
自己破産後は借金の取立てがすべてストップする
自己破産を専門家に依頼すると、債権者に対し「受任通知」と呼ばれる通知が送付されます。
受任通知には取立てや督促を停止させる法的効力があるため、債権者はそれ以上返済を迫ることができません。取立てがストップすれば精神的ストレスも軽減され、平穏な日常を取り戻すことができるでしょう。
自己破産後も最低限の財産は所有できる
自己破産をしても、最低限の生活を営むのに必要な財産(自由財産)は所有し続けられます。
手元に残せる財産の具体例は次の通りです。
- 自己破産後新たに取得した財産
- 生活に必要な家具家電類
- 99万円以下の現金
- 宗教・信仰上必要なもの(仏像や位牌など)
- 身体の補助に必要なもの(車椅子や義手、義足など)
自己破産=財産をすべて失うというイメージをお持ちの方は多いのですが、決してそのようなことはありません。
身ぐるみをすべてはがされるわけではないですし、手続き後も最低限の生活を営む権利があるのでご安心ください。
家族も基本的には今まで通りの生活が送れる
自己破産は個人を対象とした手続きのため、配偶者や子ども、親など家族の生活をおびやかすことはありません。
夫・妻・子どものご家族がいたとして、ご主人が借金で自己破産をしたとしましょう。この場合、ご主人名義での借り入れは当面できませんが、奥様に十分な収入があれば奥様名義でローンを申し込むことは可能です。
処分される財産もご主人名義のもののみであり、たとえ同一生計であっても家族が不利益を被ることはないです。また、婚約や結婚の弊害となることもないので、基本的には今までとほぼ変わらない生活が送れるとお考えください。
税金の支払い義務は免除されない
自己破産で免除されるのは借金の返済のみで、以下に該当するものは破産後も支払い義務が生じます。
- 公租公課(税金・国民年金・国民健康保険など)
- 養育費
- 慰謝料
- 罰金
- 損害賠償金など
これらは破産法第253条/免責許可の決定の効力等で定められる「非免責債権」に該当します。
納税は国民の義務であるため、自己破産をしたからといって免責されるものではありません。支払いが困難であれば、税務署や市町村の納税窓口に相談しましょう。
自己破産の6つのデメリット
自己破産をすると借金の返済義務は免責されますが、その一方で生活の一部で不便を感じることもあります。
自己破産のデメリットとしてあげられるのは以下6つです。
- 一定期間ブラックリストに登録される
- 高額な資産は維持できない可能性がある
- 連帯保証人に請求がいく
- 所有資格や就業が制限されることがある
- 官報に掲載される
- 郵便物の受取が制限されることがある
ここからは各デメリットについて、より詳しく解説していきます。
デメリット①一定期間ブラックリストに登録される
自己破産をした事実は事故情報として取り扱われ、信用情報機関にブラックリスト登録されます。
期間は5〜10年で、この間は新規の借入や各種ローンの申し込みができません。いま所有しているクレジットカードも、じきに強制解約となるでしょう。
借入やカードの利用ができなくなる点は、自己破産をする上での大きなデメリットととらえられます。しかし、現時点で支払不能である以上さらに借金を増やすような行為ができないのは、当然といえば当然です。
借入できないことに不便を感じる方もいますが、その不便さはお金の使い方を見直すきっかけにもなります。また、ご家族に安定した収入がある方がいれば、その方の名義でローンを組むことは可能です。
ブラックリストは一生続くわけではありませんし、口外しなければ他人に知られることもほとんどありません。信用情報も早ければ5年ほどで回復するので、あまり悲観せず前向きな気持ちで暮らしていきたいものです。
デメリット②高額な資産は維持できない可能性がある
自己破産をすると高額な財産は売却され、債権者への返済に充てられます。
住宅や車を手放すことになれば、多少なりとも生活は変化するでしょう。転居が必要であれば通勤や通学にも影響があるかもしれません。
自己破産で車が処分されるかどうかは、ローン残債によって左右されます。ローン会社との契約に「ローン完了まで車の所有権はローン会社にある」という取り決めがあれば、自己破産をすると車が引き揚げられてしまう可能性は高いです。
ローンがない場合、車の価値が20万以上あるかどうかで判断されます。20万以上なら返済に充てられますが、20万以下ならば基本的には所有し続けることが可能です。
持ち家については、ほとんどのケースで競売にかけられます。よっぽどのことがなければ競売で売れ残ることはありませんが、仮に買受人が現れなければそのまま住み続けられます。
デメリット③連帯保証人に請求がいく
自己破産をすると、破産者本人の借金は免責される代わりに、借金の請求先が連帯保証人へと移ります。
借金の残額は一括請求され、返済できなければ連帯保証人の財産を処分し、返済に回すよう求められます。応じなければ強制的な措置を取られたり、場合によっては連帯保証人が自己破産しなければいけない状況もありうるのです。
連帯保証人は配偶者や子ども、親などの身内に依頼することが多い傾向にあります。ご家族に迷惑をかけまいと、一歩手前で自己破産をためらう方もいます。
どうすべきかで迷った時は、一人で悩まずに弁護士や司法書士に相談しましょう。借金を整理するにはいくつかの方法があり、専門家はご相談者様の負担がもっとも少ない方法をご提案できます。
当事務所では債務整理の無料相談を行なっておりますので、借金でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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デメリット④所有資格や就業が制限されることがある
自己破産をすると、弁護士や司法書士、税理士や宅地建物取引士などの士業は就業を制限されます。
就業が制限されるのは、資格を欠くような事柄(欠格事由)があるとみなされるためです。士業に就く者の自己破産は欠格事由に該当するため、免責が許可されるまではたとえ有資格者であってもこれらの職業に従事することはできません。
また、個人情報や機密情報を取り扱う以下の職業も就業制限の対象となります。
- 旅行業務取扱管理者
- 貸金業者
- 建設業者
- 警備員など
就業の権利が回復するまでには平均で3〜6ヶ月ほどかかりますが、復権すれば今までと同じように働けます。資格が剥奪されることはありませんのでご安心ください。
デメリット⑤官報に掲載される
自己破産をした事実は、官報と呼ばれる国が発行する機関紙に掲載されます。
官報には破産者の氏名や住所、手続をした裁判所などが掲載され、ネットや図書館で誰でも無料で閲覧できます。地域の官報販売所でも購入できるので、官報をチェックしている人が身近にいれば自己破産したことが知られる可能性があるでしょう。
とはいえ、官報を日頃から読んでいるのは役所の税務係や金融機関で働く一部の人がほとんどです。誰でも見られるものですが、官報を毎日じっくり読む一般の方はそれほど多くないと考えられます。
よって、官報から自己破産したことが他人に知られることはあまり心配しなくてもいいでしょう。
デメリット⑥郵便物の受取が制限されることがある
破産法第81条/郵便物等の管理では、破産者宛の郵便物の取り扱いについて以下の規定が定められています。
裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条及び第百十八条第五項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
財産の売却によって得たお金を債権者に配当する管財事件の場合、上記にある「破産管財人の職務の遂行」に必要であるとして郵便物が破産管財人充てに転送されます。
発送先から郵便物がダイレクトに届かなければ、その分受け取りまでに日数がかかります。
しかし、緊急を要する郵便物以外なら日常生活に多大な影響を与えるとは考えにくいです。また、転送の対象となるのは破産者本人宛の郵便物のみで、ご家族宛のものが転送されることはありません。
自己破産にまつわる誤解
自己破産について、ネガティブで不正確な情報をお持ちの方は多いです。
- 会社をクビになる
- 周囲に知られる
- 自己破産したことが戸籍に残る
- 選挙権がなくなる
- 年金がもらえない
- 海外旅行に行けない
- スマホや携帯電話が持てない
- 子どもの就職が不利になる
これらはすべて、自己破産にまつわる誤解です。
自己破産のデメリットでお伝えした内容以外で、自己破産が生活に不利益をもたらすことはほとんどありません。日本国民として健康で文化的な最低限度の生活を営む権利は失われませんので、ご安心ください。
自己破産は借金で悩む方を救済するための制度
病気やケガなどの身体的理由はもちろんのこと、リストラや家族の介護といった外的要因など借金を抱える理由は人それぞれです。
「働きたくても働けない」「人の借金を肩代わりした」など、予期せぬ事情で借金を背負うこともあります。自己破産は、そのような方を救済するために国が定めた制度です。
ご自身ではどうにもできない借金のお悩みは、専門家に相談しできるだけ早く解決するのが望ましいです。
債務者にはむしろメリットの方が多い
自己破産のメリット・デメリットを比べた時、債務者にはメリットの方が多いです。
借金返済には、それを経験した人でなければわからない大きな精神的ストレスがあります。いつ返済が終わるのか、そもそも完済できるのかといった不安は、長く続けば続くほど債務者を苦しめるものです。
自己破産は、そのストレスから解放されるための手段の一つです。デメリットととらえられることはありますが、新しい気持ちで再出発できる点はデメリットを大きく上回るメリットとなるでしょう。
自己破産後の収入で貯蓄もできる
自己破産の手続き後は、ご自身で得た収入を貯めることもできます。
繰り返しになりますが、自己破産は借金返済で苦しむ方を救済するための制度です。生活を再建する機会を確保することが目的なので、今まで通り働くことはもちろんのこと、ご自身で得た収入の使い道も自由です。
自己破産による生活の制限はごく一部であり、自己破産をしたからといって何もかもが奪われるわけではありません。ブラックリストが解除されればローンは組めますし、貯めたお金も頭金に回せます。
自己破産のデメリットが不安な方は当事務所までご相談ください
自己破産をすると、家や車などの高額な財産を手放す必要があります。
数年間は借入やローン申込もできませんし、今お持ちのクレジットカードも強制的に解約となります。これらは自己破産のデメリットととらえられがちですが、借入したりカードを利用しなければ借金は増えません。
返済による精神的ストレスもなくなりますので、総合的に見ればメリットがデメリットを上回ると考えられます。自己破産が周囲に知られることもなく、基本的には今まで通りの生活が送れます。
自己破産を検討されている方は、一人で悩まずに当事務所へご相談ください。ご依頼者様にとって最善の方法をご提案させてただくので、一緒に借金問題の解決を目指していきましょう。