自己破産は、支払い不能となった借金の返済義務が免除される手続きのことです。
返済の見込みがないことを裁判所に認めてもらうと、税金等を除くすべての借金が帳消しになります。借金生活に終止符を打てるという点で、毎月の返済に頭を悩ませている方にとっては非常にありがたい制度です。
一方で、自己破産には財産を処分されるというデメリットもあります。自己破産を検討する上では、今後の生活がどのように変化するかも把握しておかなければなりません。
「自己破産するとすべての財産を失うって本当?」
「家族や職場に迷惑をかけず自己破産がしたい」
このような疑問や不安をお持ちの方のため、本記事では自己破産のメリット・デメリットを詳しく解説します。仕事・家族への影響や手続き方法もまとめているので、自己破産を検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
自己破産とは「すべての債務(借金)を免除する手続きのこと」
自己破産とは、借金を返済できなくなった人からの申立てによって行われる破産手続きのことです。
自己破産が成立すると税金や養育費を除くすべての債務が免除され、督促状や返済を迫る電話はすべてストップします。
長く借金問題に苦しむ方からすると、すべての債務が免除されることはこの上なく喜ばしいことです。しかし、自己破産をするとその後の生活で一部制限されることがあるため、単にメリットばかりとはいえません。
もし自己破産を検討しているのであれば、まずはメリットとデメリットを正しく理解することからはじめていきましょう。
参照:法務省 大人の道しるべ「第11話解説 自己破産は最後の切り札?」
自己破産のメリット
自己破産には以下のメリットがあります。
- すべての債務の支払い義務が免除される
- 督促や取り立てがストップする
- 生活に必要な財産は手元に残せる
ここからはそれぞれのメリットを詳しく解説します。
1.すべての債務の支払い義務が免除される
自己破産をすると、借金の支払いが全額免除されます。
借金問題を解決するにはいくつかの方法(任意整理や個人再生)がありますが、これらの方法では借金の一部しか減額されません。
自己破産は裁判所に「借金の返済能力がない」ことを認めてもらい、免責(債務を免れること)を許可してもらう手続きを行います。借入先が複数あってもすべて支払い免除の対象となる点は、自己破産をする上でもっとも大きなメリットであると言えるでしょう。
2.督促や取り立てがストップする
自己破産をすると、借入先からの督促や取り立てがストップします。
弁護士や司法書士に自己破産の手続きを依頼すると、債権者に対して「受任通知」が送付されます。受任通知は、依頼者に代わって専門家が代理で手続きを進めることを知らせるための通知です。
受任通知を受け取った債権者は、債務者に直接連絡をしたり、請求や取り立てをすることはできなくなります。
(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
引用元:貸金業法
先述の通り、自己破産をするとすべての債務の支払い義務が免除されるので、督促や取り立てに応じる必要がなくなります。
債権者が接見を強要することも禁止されているので、取り立てによる不安やストレスは大幅に軽減できるでしょう。
3.生活に必要な財産は手元に残せる
自己破産をすると財産をすべて失ってしまうと考える方がいますが、いきなり身ぐるみを剥がされるようなことはありません。
自己破産を申し立てると、まずは裁判所から選任される破産管財人が債権者の財産を調査します。必要最低限の生活を送るのに必要なものと、財産として処分できるものを区別するためです。
通常、生活に必要なもの、たとえば家具や家電などは手元に残すことができます。処分見込み額(いくらで売却できるか)次第では、自動車も手放さずに済む場合があります。
何もかもが処分され、無一文で放り出されるわけではない点はご安心ください。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットになりうる要素には次のものがあげられます。
- 5〜10年は借入ができない
- 住所や氏名が官報に掲載される
- 就業が制限される職業がある
- 連帯保証人が残額を一括で返済しなければならない
ここからはそれぞれのデメリットもチェックしていきましょう。
1.5〜10年は借り入れができない
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。(いわゆるブラックリスト入りの状態)
自己破産におけるブラックリストの登録期間は5〜10年で、この間は新規借り入れやクレジットカード申し込み、ローンの利用はできません。
いまお使いのクレジットカードもいずれ使用できなくなるので、人によって生活で不便を感じることが増えるでしょう。
2.住所や氏名が官報に掲載される
自己破産をすると、官報と呼ばれる機関紙に住所と氏名が掲載されます。
官報は国の重要事項を伝達する手段の一つで、土日祝日と年末年始を除いて毎日発行されます。
官報は、法律、政令、条約等の公布を国民に広く知らせる、重要な役割を果たしています。
引用元:国立印刷局「官報について」
官報は、発行日の午前8時30分に、国立印刷局及び東京都官報販売所に掲示するほか、インターネットで配信しています。
引用元:国立印刷局「官報について」
官報は国立印刷局や東京都官報販売所に掲載され、インターネットでは誰でも閲覧可能です。
一般の人が官報を毎日細かくチェックしていることは考えにくいですが、自己破産をした事実が官報によって知られてしまう可能性がある点は自己破産のデメリットと言えるでしょう。
3.就業が制限される職業がある
自己破産の手続きをはじめると、以下の職業への就業や資格が制限されます。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者
- 貸金業者
- 建設業者
- 警備員など
制限を受けるのは自己破産が成立するまでの間(3〜6ヶ月が平均)です。
免責が許可されれば復権できますが、これらの職業に従事している、あるいは資格を所有している方は注意が必要です。
4.連帯保証人が残額を一括で返済しなければならない
自己破産をすると、その影響が連帯保証人にも及びます。
借金の債務を保証する立場にある連帯保証人は、債務者が返済できなくなった場合、残りの債務を一括で返済しなければならなくなるのです。
家族や友人が連帯保証人となっている場合、本人の破産によって保証人に多大な迷惑がかかります。経済的負担はもとより、家族関係や人間関係に悪影響を及ぼす可能性も高いでしょう。
自己破産を検討している場合は、連帯保証人への相談を忘れずに行いましょう。最善策を考えるなら、専門家への相談も有効な手段です。
大阪で借金問題について相談するなら【りらいふ法務事務所】までお問い合わせください。自己破産の対応実績が豊富な専門家が、一人ひとりに合わせた解決策をご提案します。
自己破産の条件と免責されない借金の種類
自己破産をするには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 支払い不能である
- 借金が非免責債権に該当しない
- 免責不許可事由に該当しない
自己破産には、借金が◯円以上でなければいけないという金額の基準はありません。借金の額に関わらず、支払い不能である(返済能力がない)ことが大前提となります。
仮に借金が1,000万円以上あったとしても、十分な収入があれば支払い不能とは言えません。反対に、借金が数十万円でも返済能力のない無職・無収入の方は自己破産が可能です。
返済できないといっても、税金や健康保険料、養育費などは自己破産の対象外です。また、免責不許可事由に該当する借金も、免責されない可能性があります。(ギャンブルや浪費、名義貸し、詐欺などによるもの)
自己破産後の生活への影響
自己破産後は、原則として今まで通りの生活を送ることが可能です。
しかし、所有する財産は処分の対象となり、信用情報機関に事故情報が登録されることで一部生活への影響が懸念される点もあります。
ここからは、仕事・家族・財産・その他に分けて、自己破産後の影響を解説します。
仕事|職場にはバレないが一部制限される職業・資格がある
自己破産を理由に会社を解雇(クビ)されることはありません。
先に述べた就業が制限される職業を除き、通常は資格を剥奪されることも職場から罰せられることもありません。ただし、会社からお金を借りている場合は自己破産したことが知られる可能性が高いです。
また、給料の差し押さえも職場に自己破産がバレるきっかけとなります。仕事は続けられますが、自己破産したことが職場に知られるリスクがゼロではない点は心に留めておきましょう。
家族|基本的に大きな影響はない
自己破産は個人的な手続きなので、家族に直接的な影響が出ることはありません。
仮に夫が自己破産をしたとしても、その妻や子が責任を問われることはありません。ただし、持ち家や自家用車などの財産を処分される過程で、自己破産したことが知られてしまう可能性は高いでしょう。
持ち家が処分の対象となる場合、競売にかけられた後半年〜1年ほどで退去を求められます。その間は次の居住先を見つけなければなりません。
なお、持ち家が家族名義のものであれば自己破産をしてもそのまま住み続けることが可能です。さらに、自己破産後も家族名義であればローンに申し込むこともできます。
注意しなければいけないのは、家族が連帯保証人になっているケースです。
この場合は自己破産によって請求先が連帯保証人へと移ります。これにより連帯保証人が借金を肩代わりしなければならず、家族に多大な迷惑をかけることになるでしょう。
財産|99万円以下の現金は手元に残せる
自己破産をしても以下の財産は手元に残すことが可能です。
- 99万円以下の現金
- 20万円未満の預貯金・保険
- 生活に必要な家具や家電類
- 自己破産後に取得した財産(新得財産)
- その他法律で差押えが禁止されている財産(差押禁止財産)
生活を営むために必要なお金や必需品は「自由財産」として扱われます。自由財産は自己破産をしても差押えが禁止されているため、最低限の財産は手放さずに済みます。
このほか、給料・退職金・年金・仕事に必要な道具なども手元に残すことが可能です。
その他|携帯電話・スマホが解約される可能性がある
自己破産をすると、携帯電話やスマートフォンが強制解約される可能性があります。
強制解約となるのは、端末代金を分割払いにしている、または料金が未払いになっているケースです。端末代金を分割で支払うということは、携帯電話会社とローン契約を結んでいるのと同義です。(すでに端末代金の支払いを終えている場合はあまり心配いりません)
また、自己破産後は信用情報機関に事故情報が登録されるため、新規での分割払い契約や後払い方式の携帯プランを利用することも難しくなります。
強制解約されてしまった場合は、家族名義で新たに契約するか、プリペイド式の携帯電話やスマートフォンを契約する方法があります。
その他の生活への影響については以下の表をご覧ください。
生命保険・学資保険 | 解約返戻金が高額だと解約される可能性がある。 |
パスポート・旅行 | 影響なし。パスポートの新規取得も可能。 |
年金 | 受給され続ける。 |
選挙権 | 影響なし。 |
奨学金 | 返済義務がなくなる。 |
生活保護 | 受給され続ける。 |
戸籍・住民票 | 影響なし。何も記載されない。 |
自己破産の手続き方法の流れ
自己破産は以下の流れで手続きを進めていきます。
- 弁護士や司法書士に相談する
- 委任契約
- 受任通知の送付
- 取引履歴の開示
- 必要書類の収集・作成
- 自己破産の申立て
- 自己破産の手続き開始
- 免責の決定および確定
自己破産を弁護士や司法書士に依頼すると、まず債権者に対して「受任通知」が送付されます。
受任通知は専門家が代理人となり、本人に代わって手続きを行うことを知らせるための通知です。受任通知を受け取ると、債権者は督促や取り立てができなくなります。
その後、債権者から取引履歴を取り寄せることになりますが、こちらは1〜3ヶ月ほど時間がかかります。(期間は業者によって変動)
必要書類がすべて揃ったら、次は裁判所に自己破産の申立てを行います。裁判所から補正指示があれば都度対応し、問題がなければ手続きが決定するという流れです。
開始決定からおよそ2ヶ月間は意見申述期間(債権者に対し意見を求める期間)となります。この期間が終了すれば免責が決定し、さらに1ヶ月後に自己破産に関するすべての手続きが完了します。
自己破産の手続きにかかる費用
自己破産をするには、裁判所への費用や弁護士・司法書士への報酬など、一定額の費用が必要です。
総額は依頼する専門家や手続きの内容によって異なりますが、一般的には以下の項目が含まれます。
費用の種類 | 内訳 |
裁判所費用 | 1.申立手数料(収入印紙):1,500円程度 2.郵券代:数千円程度 3.官報公告費:10,000~15,000円程度 ※官報に自己破産の通知を掲載するための費用 |
弁護士・司法書士の報酬 | 20万円~50万円程度 |
その他費用 | 数百円~数千円程度 ※戸籍謄本や住民票など必要書類の取得費用 |
経済的事情で支払いが困難な場合は、法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助制度」を利用することで弁護士費用の立て替えや減額が可能になることがあります。
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自己破産にまつわるよくある質問
最後に、お客様から多く寄せられる自己破産についての質問と回答をご紹介します。
Q.自己破産すると裁判所から呼び出されますか?
審尋(面接)や手続き内容を確認する目的で呼び出されることがあります。
問題がなければ短時間で終わりますが、不安があればあらかじめ専門家に相談しておくと安心です。
Q.会社(法人)が倒産すると経営者も自己破産が必要ですか?
状況によります。
経営者が法人債務の連帯保証人になっている場合、会社が倒産すると返済義務は連帯保証人である経営者に移ります。
連帯保証人は会社に代わって債務を肩代わりしなければなりませんが、法人の債務は個人で払えるような金額ではないケースが大半です。そうなると、連帯保証人は自己破産を検討する必要があるでしょう。
反対に、個人保証をしていなければ、経営者が必ずしも自己破産をする必要はありません。法律上、会社と経営者は別人格として扱われるため、会社の倒産は経営者個人に影響を及ぼすことはないと考えます。
Q.自己破産するとできないことはありますか?
信用情報が回復する5〜10年の間は、新規の借入やクレジットカードの契約ができなくなります。
一部の士業は就業を制限されることがありますが、破産手続きが終了すると制限は解除されます。
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