長年放置した借金の時効を成立させるには、時効の援用と呼ばれる手続きが必要です。
手続き自体は非常にシンプルですが、書類を作成する上でいくつか注意点があります。また、時効を主張するタイミングを誤ると、時効が成立するどころか返済を求められる恐れがあります。
ご自身で時効の援用をしようとする場合は、一つひとつのプロセスを丁寧に行わなければなりません。
本記事では時効の援用のやり方をわかりやすくまとめています。ご自身で手続きしようとお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
時効の援用のやり方は?
時効の援用を自分でやろうとする時、確認しなければいけないことが2点あります。
1つは借金の時効期間が経過しているかどうか、もう1つは債権者が自分に対して裁判を起こしていないかという点です。
借金の時効期間は5年または10年と定められており、時効を主張するにはこの条件を満たしていることが大前提となります。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用元:民法
時効期間が経過しているかどうかは、信用情報機関に情報照会を行う必要があります。(債権者からの督促ハガキや封書などで確認できれば情報開示請求は不要です)
時効期間が経過していても、借金を放置している間に債権者から裁判を起こされていた場合は時効の援用はできません。(時効がリセットされるため)
債権者に必要書類を送付するのは、上記2つの条件を満たしていることが確認できてからです。
消滅時効援用通知書を内容証明郵便で送付する
時効期間が経過しており、債権者から裁判を起こされていないことが確認できたら、時効援用通知書を用意します。
時効援用通知書には必要事項を漏れなく記載し、内容証明郵便で送付しなければなりません。(書き方は後ほど詳しく解説します)
内容証明郵便は差出人や受取人、文書の内容などを郵便局が証明してくれるサービスのことです。
書類の内容を残すことは法的証拠や差出人の意思表明などの役割を担うため、普通郵便ではなく内容証明郵便での送付が必要となります。
電話で伝えることもできるがおすすめはしない
時効の援用は書面で手続きするのが一般的ですが、厳密には電話で時効を成立することも可能です。
債権者に電話し、借金が時効を迎えたことを伝えるだけで形式上は時効を主張したことになります。
ただし、電話でのやりとりはあくまで口約束であり、時効を主張した証拠が残りません。債権者が「時効の援用についての連絡はなかった」と主張すれば、ふたたび返済を迫られる可能性も出てきます。
確実に手続きを進めるという意味では、電話ではなく「時効援用通知書を内容証明郵便で送付して証拠を残す」ことが大切です。
時効の援用の文面に決まりはある?テンプレートでもOK?
時効援用通知書に決まった形式はありません。
ご自身で作成する場合、インターネットで探したテンプレートを活用してもOKですが、必要事項が漏れなく書かれているかは念入りに確認しましょう。
時効援用通知書に記載すべき事項は次の通りです。
記載事項 | 内容 |
日付 | 作成日または発送日 |
債権者の情報 | 基本は請求書に記載されている住所と名前。不明であれば本社住所でも可。 |
自分の情報 | 氏名・住所・生年月日・借入額。契約番号などがわかれば記載する。旧姓・旧住所で契約した場合はそちらも記載する。 |
消滅時効を主張する旨 | 「本通知書をもって消滅時効を援用します」など。 |
信用情報を削除または訂正してほしい旨 | 「本通知書の受領後速やかに信用情報機関宛に適切な通知を行い、事故情報を抹消していただくようお願い申し上げます」など。 |
時効援用通知書は「誰が誰に対して時効援用をするのか、そして、時効を認める場合は事故情報を削除するよう依頼する」ことが明確に記されていることが重要です。
また、作成した通知書は一部コピーをとって保管しておくことをおすすめします。
時効の援用を自分でやるのはデメリットが多い
時効の援用は書類を作成し、然るべき手段で相手に通知できればそれほど難しい手続きではありません。
しかし、知識のない方が自分でやるのは失敗のリスクがあるため、専門家の立場としてはあまりおすすめできません。
タイミングを誤ると失敗する可能性がある
時効の援用を成功させるには、借金の時効期間が経過していることが大前提となります。
時効期間が判明しても、途中で返済の約束をしたり返済期限の延長を求めたりするとその時点で時効はリセットされます。
それを知らずに手続きすると、当然ながら時効は成立しません。
それどころか、債権者から連絡が入り、相手とのやりとりの中で意図せず借金を認める発言をしてしまえばその時点で時効の援用は失敗に終わります。
失敗を防ぐには専門家に相談するのがおすすめ
時効の援用を検討する場合、自分で手続きする以外にも専門家へ依頼するという選択肢があります。
時効の援用は弁護士や司法書士、行政事務所が相談先となります。(司法書士ができるのは書類作成と送付のみです)
借金問題を得意とする専門家は、債権調査や時効可否の照会などさまざまな手続きをスムーズに行えます。
自分で手続きして失敗すると、残された道は全額返済か債務整理の二択です。債権者次第では相手が有利になる方向で話し合いを進められるかもしれません。
専門家に依頼すれば自分でタイミングを誤って失敗することはないですし、煩雑な手続きを代行してもらえるメリットもあります。
状況的に時効の援用が難しい場合でも、相談者が不利にならないようベストな方法を提案してもらえます。
失敗のリスクを考えると、時効の援用は借金問題のプロに相談するのがおすすめです。
時効の援用が成立したかどうかはどこで確認できる?
時効援用通知書を送付しても、債権者から連絡がくることはほとんどありません。
中には時効成立後に契約書を送り返してくる債権者もいますが、このような対応をする会社は少ないです。
音沙汰がなければ「本当に時効が成立したのか?」と不安になりますが、連絡がなければ時効が認められたと思っていいでしょう。
時効が成立したか確認したい場合は、手続き後1ヶ月以上経ってから信用情報を取得し、事故情報が削除または修正されているかをチェックしてみてください。
信用情報を取得する以外では、債権者に直接電話して確認する方法もあります。この場合は住所や氏名など、時効援用通知書に記載した情報を伝えるとスムーズに回答してもらえます。
大阪で時効の援用をするならりらいふ法務事務所までお問い合わせください
借金の時効を成立させるには、時効援用通知書と呼ばれる書類を作成し、債権者へ内容照明郵便で送付する必要があります。
書類作成の前には時効期間が経過しているか、裁判を起こされていないかも確認しなければなりません。
自分で手続きすることもできますが、タイミングを誤ると返済を迫られる場合があるため、準備は念入りに行ってください。
「自分でできるか自信がない」「失敗したくない」といった不安がある方は、無理に自分でやろうとせず専門家に相談することをおすすめします。
りらいふ法務事務所は、時効の援用をはじめさまざまな借金問題を専門に扱う法務事務所です。相談は無料ですので、困ったことがあればお気軽にお問い合わせください。