任意整理を検討するにあたって、手続き後の生活がどのように変化するか不安を感じる方は多いと思います。
「任意整理の完済後いつになれば信用情報は回復する?」
「カードブラックでも住宅ローンは組めるのか」
このような疑問をお持ちの方のため、本記事では任意整理後の生活で注意すべきポイントを解説します。
目次
任意整理後は約5年で信用情報が回復する
任意整理をした事実が事故情報として登録される期間は、約5年間です。
この間はいわゆるブラックリスト入りした状態が続きますが、一定期間が経過すると事故情報は自動的に削除されます。(削除の通知はきませんが、信用情報期間にご自身で確認することは可能です)
ブラックリストの登録期間は、事故情報として登録された理由によって以下の通り異なります。
KSC | JICC | CIC | |
61日以上の延滞 | 約5年 | 約5年 | 約1年 |
3ヶ月以上の連続延滞 | 約5年 | 約5年 | 約5年 |
強制解約 | 約5年 | 約5年 | 約5年 |
任意整理/個人再生/特定調停 | 約5年 | 約5年 | 約5年 |
自己破産 | 約10年 | 約7年 | 約5年 |
ブラックリストを削除する方法はある?
ブラックリストは信用情報機関が管理するものであり、自分で削除することはできません。
信用情報の変更には、信用情報機関または金融機関への申請が必要です。またブラックリストを削除できるのは情報に誤りがあった場合や、借金の時効を主張した場合など限られたケースのみです。クレジットカードを作りたい、ローンを組みたいなどの理由で削除はできませんのでご注意ください。
任意整理後、完済までの期間は3年が平均
任意整理をすると将来支払う予定だった利息がカットされ、残りの元金のみ返済することになります。
返済の期間は金融機関との交渉によって決定し、多くの場合3〜5年での返済を求められます。ボーナスや臨時収入などでお金に余裕ができれば、繰上返済も可能です。
任意整理後に再び返済が困難になった時は?
任意整理には回数制限がないので、手続き後に再び返済が困難になれば債権者にもう一度相談することは可能です。
債権者が合意すれば再和解が成立しますが、現実には再和解できるケースはほとんどありません。仮に再和解できたとしても、月々の返済額は今までと同額といった債務者には厳しい条件を提示される可能性が高いでしょう。
任意整理の完済後すぐにクレジットカードやローンに申し込める?
任意整理後に残債をすべて返済しても、すぐに借入ができるわけではありません。
借金返済後も、信用情報が回復していなければクレジットカードやローンの審査が通る可能性はほぼゼロに等しいです。
ブラックリスト入りした状態でクレジットカードやローンに申し込むと、審査に落ちるだけでなく金融機関に悪い印象を持たれる可能性があります。ブラックなのに新規で申し込む=切羽詰まった状況なのでは?と判断される恐れがあるでしょう。
信用情報が回復しないうちに新規で借入しようとするのは、申込者本人にとってデメリットしかありません。
任意整理後、新たに借入を起こす際はブラックリストが削除されたかを確認してからにすることをおすすめします。
クレジットカードの申込に落ちるとブラックリストが延長される?
ブラックリスト入りしたままクレジットカードの新規申込をしても、当然ながら審査は通らないでしょう。
クレジットカードの審査に落ちたという理由で、事故情報の登録期間が延長されることはありません。ただし、その他にも滞納している借金があればブラックリストの登録期間が長くなる可能性があります。
任意整理の完済後、完済証明書はいつ届く?
任意整理で残債をすべて払い終えると、1週間〜10日ほどで完済を証明する書類が届きます。
名称は「契約終了のご案内」「契約終了通知書」など金融機関によってさまざまで、金銭消費貸借契約書(最初の契約書)の原本が送付されてくるケースもあります。
この証明は、晴れて借金を返済し終えた証となるものです。しかし、家族や同居人に内緒で任意整理をしている方にとっては、借金していた事実が知られてしまうリスクがあるでしょう。
自宅に届くと困るようであれば、手続きを依頼した専門家と金融機関にあらかじめ伝えておくことが大切です。
任意整理後、新規借入する際にすべきこと
任意整理の完済後、新たに借入を起こそうとする際にすべきことが5つあります。
- 信用情報を確認する
- クレジットヒストリーを作る
- 任意整理した金融機関以外に申し込む
- 多重申込は避ける
- 頭金を多く用意する
それぞれの注意点を詳しく解説します。
その①信用情報を確認する
自分の信用情報は、信用情報機関に開示請求することで確認できます。
ブラックリストが削除になってもこれといった知らせはないので、完済後5年が経過したあたりで情報開示を請求してみましょう。
信用情報機関は3つ(KSC・JICC・CIC)あるので、該当する機関にインターネットまたは郵送※で開示請求を行います。
開示請求で確認できる情報は次の通りです。
- クレジットやローンの契約内容
- 契約金額
- 申込履歴
- 返済状況など
開示請求には1,000円程度の手数料がかかります。
※JICCとCICは窓口での開示請求も可能です。全国に窓口がありますが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い開示業務を一部休止している窓口もあります。
その②任意整理した金融機関以外に申し込む
クレジットカードやローンに申し込む際は、任意整理したカード会社または金融機関以外で手続きすることをおすすめします。
任意整理の完済後、信用情報機関に登録されている事故情報は約5年で削除されます。しかし、これはあくまで信用情報機関が管理する情報に限った話です。
任意整理を行った債権者(金融機関)が独自に管理する情報は、5年で削除されるとは限りません。事実、任意整理したカード会社(関連会社含む)は何度も審査に落ちているのに、他社だと1回でカードが作れたというのはよく聞くお話です。
金融機関としても、滞納のリスクがある人物の入会は避けたいと考えるのは当然のことです。
以上の理由から、任意整理後は別の会社や金融機関に申し込むのがいいでしょう。
その③多重申込は避ける
早くクレジットカードを作りたいからといって、複数の会社に同時申込するのはやめた方がいいでしょう。
短期間に複数の会社に申し込むことで審査が不利になってしまう状態を「申込ブラック」と表現することがあります。
そもそもクレジットカードは1〜2枚あれば十分であり、それ以上の申込があれば不審に思われる可能性が高いです。
とくに、ブラックリスト入りしたことのある人物が短期間で複数のカードに申し込んだとなれば、経済的な余裕がないのでは?と判断されてしまうかもしれません。
その④頭金を多く用意する
任意整理の完済後新たに借入をする時は、頭金をできるだけ多く用意することをおすすめします。
頭金を多く用意すべき理由は、借入の総額が下がることによってローンの審査に通りやすくなるためです。
住宅ローンのような高額な借入は、総額の約20%の頭金があると審査が有利になると言われています。ローンの審査基準は頭金だけではありませんが、頭金が多いことで金融機関の信頼も得られるでしょう。
また、頭金が多いと月々の返済額も低くなるので、任意整理後は返済と合わせて蓄えを増やしておくことが大切です。
その⑤クレジットヒストリーを作る
信用情報が回復すると、クレジットやローンなどの利用履歴がすべて削除されます。(この状態をホワイトと言うことがあります)
実は、借入の実績がないとクレジットやローンの審査では不利になることが多いのです。
そもそも信用情報がホワイトになるのは、過去に滞納などでブラックリスト入りしたためです。お金を貸す側は、金融事故を起こしたことのある人を「要注意人物」と判断する可能性があるでしょう。
審査が不利にならないよう、ブラックリストが削除された後はクレジットヒストリーを作るのがおすすめです。
クレジットヒストリーは、携帯電話の端末代や通販の分割払いで作ることができます。信用情報が回復し、クレジットカードが作れたら公共料金や各種税金をカード払いにするのもいいでしょう。
任意整理後すぐに住宅ローンを組む方法
任意整理後、5年以内に住宅ローンを組む方法が一つだけあります。
それは、家族の名義でローンを組む方法です。
任意整理は個人単位で行われるものなので、仮にご主人が任意整理をしても奥様の信用情報が傷つくわけではありません。よって奥様名義で申し込めば、借入を起こせる可能性があります。
ただし、このケースでは配偶者の返済能力が問われます。審査は奥様の年齢や収入、健康状態などで判断されるので、返済が困難だと判断されれば当然ながらローンを組むのは難しいでしょう。
親の名義で住宅ローンは組める?
住宅ローンは、名義人が対象の物件に住むことが前提で契約できるローンです。購入予定の家に親が同居しないのであれば、原則として親名義で住宅ローンを組むことはできません。
しかし近年は「親族居住用住宅ローン」といって、親族の家を買う場合に利用できるローンを提供する金融機関が増えてきました。こちらであれば子どもが住む家を親名義のローンで購入できますが、通常の住宅ローンに比べて条件が厳しいという側面があります。
任意整理後に生活で制約されることはある?
「任意整理をすると財産を失う」
「職場にバレるとクビになる」
「近所の人に知られる」
これらはすべて任意整理についての誤った理解です。任意整理をしても財産はそのまま所有できますし、任意整理を理由に勤め先を解雇されることもありません。
任意整理したことを他人に話さなければ、周囲に知られることもないのでご安心ください。
クレジットカードやローンを利用できない以外に、任意整理後に制限される条件には次の3つがあります。
- 携帯電話やスマートフォンの端末代金は分割返済できない
- 奨学金の保証人になれない
- 賃貸物件への引っ越しができない可能性がある
それぞれの内容を詳しくお伝えします。
携帯電話やスマートフォンの端末代金は分割返済できない
任意整理後、ブラックリストが削除されるまでは携帯電話やスマートフォン端末の分割払いはできません。(携帯電話を所有したり機種変更すること自体は可能です)
携帯端末の分割払いには「割賦販売法」という法律に基づいて支払い能力の審査が必要となります。審査の際は信用情報の確認が行われるため、ブラックリスト入りしている間は分割購入ができないのです。
対処法としては、一括払いまたは家族名義で購入する方法があります。
奨学金の保証人になれない
任意整理後に注意すべきことの一つに、信用情報が回復するまでは保証人になれない点があげられます。
よくある例としてはお子さんの奨学金です。この場合、任意整理した方以外の親族が保証人になるのは問題ありません。
なお、親が任意整理をしたからといってお子さんの受験や進学、就職に影響は及ぼしませんのでこちらもご安心ください。
賃貸物件への引越しができない可能性がある
任意整理後、ブラックリストが削除されるまではアパートやマンションの賃貸契約ができない場合があります。
これは、信販系の保証会社が申込者の信用情報を確認する可能性があるためです。
ブラックリスト入りしている間の家探しは、保証会社が不要な物件を探すのがいいでしょう。また、クレジットカードが使えないので家賃が口座引き落としであるかも合わせて確認するこが大切です。
任意整理後に借金を繰り返さないためにできること
任意整理は借金問題を解決するための仕組みですが、自己破産と違い手続き後も返済が続きます。
完済が最終的な目標であり、任意整理すること自体がゴールなわけではありません。 返済負担が軽減できたと油断はせず、お金の使い方を改めることに努めてください。
借金を繰り返さないためには、買い物や支払いは現金一括を心がけましょう。家族カードに頼る時は使いすぎに注意し、リボ払いはしないようお気をつけください。
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任意整理の完済後、信用情報は約5年で回復します。
5年は長いと感じますが、返済負担が軽減されることで「任意整理をしてよかった」と前向きな気持ちになれる方がほとんどです。クレジットカードが使えない不便も、デビットカードやプリペイドカードで対処できます。
悩んでいる間にも返済日は近づいてくるので、借金問題でお悩みの方はできるだけ早く専門家へご相談ください。
当事務所はこれまでに数多くの任意整理を担当してまいりました。一人ひとりの状況に合った最善の解決策をご提案しますので、借金でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
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