借金を減額できる任意整理は、借金問題でお困りの方にとってメリットの大きい手段です。
返済負担が軽減できると聞いて、任意整理を前向きに検討される方は多いです。その一方で、手続き後に生活が不便になることを懸念される方もいます。
「任意整理をするとクレジットカードが使えなくなるって本当?」
「家や車は手放したくない」
「子どもの進学や就職に影響はあるのか」
このような不安や疑問を解消するため、この記事では任意整理後の生活がどのように変化するかをまとめました。
目次
任意整理後の生活はどう変化する?気になる11の影響
借金問題に直面した時、返済負担を軽減するにはいくつかの方法があります。
中でも任意整理は裁判所が介入しないので、比較的簡単に、リスクも抑えつつ手続きを進められるのが大きな特徴です。
といっても、任意整理後は生活の一部で制限されることがあるため、手続きを検討されている方はどのような影響があるかを事前に把握しておく必要があるでしょう。
ここからは、相談者様からご質問の多い任意整理後の生活への影響を解説します。
①クレジットカード|当面は利用ができない
任意整理をすると、信用情報機関にその事実が登録されます。
信用情報機関とは?
金融機関やクレジットカード会社などが取り扱う顧客情報(返済状況・残高・事故情報など)を管理する機関のこと。CIC・JICC・KSCの3つの機関があり、事故情報は全機関で共有される。
事故情報の登録とは、いわゆるブラックリスト入りしている状態のことです。任意整理後約5年間はブラックリストに登録されるため、その間はクレジットカードの新規申し込みはできません。
今お手元にあるクレジットカードについても、任意整理をするとじきに利用停止となります。
ブラックリストは一生残るものではなく、任意整理の場合はおよそ5年で事故情報は自動的に削除されます。削除後は再度クレジットカードの申込が可能となりますが、任意整理前と同じ会社で作成するのは難しいかもしれません。
②住宅や自動車など各種ローン|ブラックリスト解除までローンは組めない
クレジットカードと同様、住宅や自動車といった各種ローンも、ブラックリストが解除されるまで申し込みはできません。
任意整理した会社と別会社のローンなら申し込めるのでは?と考える方もいますが、金融の事故情報はすべての信用情報機関で共有されます。
したがって、任意整理した会社とまったく関連のない金融機関のローンに申し込んでも審査は通らないとお考えください。(事故情報が削除されれば新たな借入は可能です)
住宅ローン返済中に任意整理はできる?
任意整理は整理する債権者を選択できるので、住宅ローン以外の借金であれば任意整理できます。(住宅ローンは抵当権の関係で任意整理できない)
例として、A社(クレジッドカード会社)・B社(消費者金融)・C社(住宅ローン)の3社の借金がある場合、A社とB社であれば任意整理は可能です。
住宅ローンの契約にあたっては、債権者が不動産を担保にとる権利を設定します。住宅ローンを滞納すれば、債権者がこの権利を行使することで担保にとった不動産を売却し、債権を回収できるからです。
以上の理由から、住宅ローン返済中の方が任意整理する場合、住宅ローン以外の借金で手続きを進めていくのが一般的です。
③財産|基本的には所有し続けられる
「債務整理をすると財産を差し押さえられる」というイメージがあるようですが、任意整理の場合そのようなことはありません。
そもそも任意整理は、整理する借金をご自身で選択できます。住宅ローンはその性質上任意整理はできませんが、車を手放したくなければマイカーローン以外の借金を任意整理すればいいのです。
自己破産のように財産を強制的に奪われることがないのも、任意整理の大きなメリットといえるでしょう。
④携帯電話|利用は継続できるが端末代の分割払いはできない
任意整理をしても、今お使いの携帯電話やスマートフォンは引き続き利用できます。
ただし、任意整理後に携帯端末を購入する場合は分割払いができない点は注意が必要です。
携帯端末の分割払いができないのは、任意整理によって事故情報が登録されるのが理由です。(ブラックリスト入りしている間は一切の借入ができないため)
また、利用料金を滞納したまま任意整理をすると強制解約される点も気をつけたいポイントです。強制解約後は再契約が難しくなるため、任意整理をする場合は携帯電話会社を除外することをおすすめします。
なお、事故情報が削除されれば分割払いは可能となります。
⑤家族|家族の仕事や学業に影響はない
任意整理は個人単位の手続きなので、ご家族を含む第三者のお仕事や学業に影響を与えることはありません。
極端な話、その気になればご家族に知られないよう任意整理を進めることも可能です。意整理は裁判所が介入しないので、弁護士や司法書士に相談すれば関係書類が自宅に届かないようにすることもできます。
もっとも、クレジットカードが突然利用できなくなったことを不審に思い、ご家族に知られてしまったというケースは十分に想定できます。
⑥仕事|会社に知られるリスクはほとんどない
任意整理をした事実が会社に知られるリスクは極めて低いです。
会社に知られる可能性があるとすれば、
- 会社からの借入(従業員貸付制度など)を任意整理した
- 任意整理したことを他人に話した
- 任意整理後の返済を怠った
- 給与が差し押さえられた
などのケースが想定できます。
任意整理の話し合いは本人と債権者、そして手続きを行う専門家の三者間で進められます。個人情報が漏洩するような事態でもない限り、基本的には職場に知られることはないといっていいでしょう。
⑦進学|影響はないが奨学金の保証人にはなれない
任意整理はお子さんの受験や進学に影響を与えないのでご安心ください。
ただし、任意整理した本人が奨学金の保証人になれない点は注意が必要です。この場合、任意整理した方以外の親族が保証人になるのは問題ありません。
保証人を立てた借金を任意整理するとどうなる?
保証人のいる借金を任意整理すると、債権者はその保証人に対して一括請求を行います。状況次第では保証人もブラックリストに登録され、当面はほかの保証人になることができなくなる可能性もあります。
金額にかかわらず、借金を肩代わりさせるのは相手に多大な迷惑をかける行為です。保証人へ請求がいかないようにするには、保証人を立てた借金以外を任意整理するのがいいでしょう。
⑧引っ越し|賃貸物件は審査に通らない可能性がある
任意整理を理由に家を追い出される、あるいは引っ越しを制限されるといったことはありません。
転居について起こりうるリスクは、賃貸物件の審査に通らない恐れがある点です。信販系の保証会社を利用する場合、申込者の信用情報を照会される可能性があります。(不動産の仲介業者自体は信用情報を確認できません)
参考として、信販系の保証会社を以下にまとめました。
- オリエントコーポレーション
- 株式会社エポスカード
- 株式会社ジャックス
- 株式会社セゾン
- 株式会社セディナなど
任意整理後に賃貸物件への引っ越しを検討する際は、家賃の支払いが口座引き落としであるかもチェックするといいでしょう。(任意整理後はクレジットカードが利用できないため)
⑨戸籍|任意整理の事実は戸籍に残らない
戸籍や住民票には、任意整理をはじめとする債務整理に関する記載欄はありません。
結婚を控えた方から「婚約者にバレたくない」といった相談をいただくことがあるのですが、任意整理は婚姻に影響を与えないのでご安心ください。
また、結婚後に任意整理をしたとしても、保証人にならない限りは本人以外が返済責任を負うこともありません。
⑩選挙権|任意整理を理由に選挙権が制限されることはない
選挙権は18歳以上の日本国民に与えられる権利であり、任意整理をしたかどうかで選挙権がなくなることはないです。
⑪税金や年金|非免責債権のため減額はされない
任意整理は借金の返済負担を軽減するための手段であり、税金や年金の支払い義務を免れるものではありません。
家計をやりくりしても税金を納めるのが難しい場合は、税務署や市町村の相談窓口への相談が必要です。相談次第では納付の猶予や延滞税の軽減など、柔軟に対応してもらえる可能性があります。
補足ですが、現在年金を受給されている方が任意整理することは可能です。任意整理できるかどうかは、手続き後の返済能力や債権者の同意が得られるかどうかにかかってきます。
任意整理後に自己破産はできるのか?
任意整理後に生活環境が変化し、当初は返済できると思っていた借金が返せなくなる可能性はゼロではありません。
この場合、任意整理後に自己破産を申し立てることが可能です。
任意整理をするには債権者の同意が必要ですが、自己破産は裁判所が支払不能と認めれば債権者の同意なく手続きできます。
自己破産は借金を全額帳消しにできるのが大きなメリットです。しかし財産の所有を制限されたり、官報に名前が掲載されたりするといったデメリットもあります。
さらに、自己破産は任意整理に比べてブラックリスト入りしている期間が長いです。(7〜10年)
手続き上の問題はないにしても、生活で制限される部分が増えることは頭にいれておきたいものです。
任意整理後の返済方法
任意整理は借金の一部を減額する方法なので、手続き後も返済は続きます。
本人が口座振込で返済するのが一般的ですが、弁護士・司法書士事務所の中には返済代行を行っているところもあります。
返済代行は、返済先が複数あっても振込先は1ヶ所(弁護士・司法書士事務所)で済むのが大きなメリットです。基本的には事務所がすべて管理するので、遅延や関係書類が自宅に届く心配もありません。
代行返済ができるかどうかは各事務所によって異なります。希望する方は、弁護士・司法書士選びの時点で確認しておくのがいいでしょう。
任意整理後にブラックリストが解除されたかを確認する方法
ブラックリストが削除されたかどうかを確認するには、信用情報機関に開示請求を行います。
情報開示は本人から請求があった場合のみ、契約内容や支払い状況などが確認できます。
開示方法は以下の3つです。
- インターネット
- 電話
- 窓口※KSCは窓口での開示不可
情報開示には本人確認書類の提出と500〜1,000円の手数料が必要です。
CICの情報開示についてはこちら
JICCの情報開示についてはこちら
KSCの情報開示についてはこちら
任意整理後に2回目の任意整理はできる?
任意整理後に返済が困難になり、もう一度任意整理することを「再和解」といいます。
再和解は不可能ではないものの、1回目より厳しい条件を提示される可能性が高いです。なぜなら、債権者はすでに1度新たな返済計画を受け入れており、その条件で返済できなかったという事実が残るからです。
もう一つ、1度目の任意整理で完済した後にふたたび借金を抱えてしまった場合の任意整理についても解説します。
こちらの場合も手続き自体は可能ですが、返済に困るだけの借金を繰り返すのはお金の使い方をもう1度見直さなければなりません。
制度上は2度でも3度でも手続きできますが、任意整理は債権者に迷惑をかける行為です。1度目と同じ債権者であれば、厳しい対応になる可能性は高いと思っていた方がいいでしょう。
任意整理後の生活が不安な時は専門家に相談を
任意整理には借金を軽減できるメリットがありますが、生活の一部で工夫を求められる場面が増えます。
クレジットカードを使う生活に慣れている方は、支払い方法の見直しが必要となるでしょう。携帯電話の機種変更をする際は端末代を一括払いしなければなりませんし、任意整理した本人は保証人になることもできません。
どれも事故情報が削除されるまで制限なので、お金の使い方を改めながら残りの借金を返済していきましょう。
借金問題によって任意整理を検討中の方は、できるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。滞納を続けると一括返済を求められ、今まで以上に苦しい状況に追い込まれることとなります。
当事務所はこれまでに数多くの借金トラブルを解決に導いてまいりました。「自分は任意整理できるのか」「手続き後の返済に不安がある」などのお悩みがある方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。