住宅を購入しようとする時、過去に行なった自己破産がどう影響するか不安を感じるものです。
結論からいいますと、自己破産後しばらくの間は住宅ローンが組めません。しかし、一生ローンが組めない(家を購入できない)わけでもありません。
「自己破産すると住宅ローンが組めないって本当?」
「マンションのローンが払えず自己破産を検討している」
このような疑問を解消するため、本記事では自己破産後に住宅ローンが組めるようになるまでの期間や審査のポイントを解説します。自己破産後の持ち家がどうなるかも説明するので、住宅ローンの返済でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
自己破産後5〜10年は住宅ローンが組めない
自己破産をすると当面は住宅ローンを組むことができません。
これは、自己破産した事実が事故情報として信用情報機関に登録されるためです。(いわゆるブラックリスト入りの状態)
信用情報を管理しているのは以下3つの機関で、事故情報のほかローンやクレジットカードの契約内容、返済状況なども登録されています。
信用情報機関 | おもな加盟企業 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 銀行・信用金庫・信用組合・信用保証協会など |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | 信販会社(クレジットカード会社)・リース会社・消費者金融会社・携帯電話会社など |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 消費者金融や信販会社、商工ローン業者など |
5〜10年と開きがあるのは、各信用情報機関によってブラックリストの登録期間が異なるためです。(※JICCは約5年、CICは約7年、KSCは約10年が目安)
また、どの方法で債務整理をするか(自己破産/任意整理/個人再生)によってもブラックリスト入りの期間は異なります。
自己破産後でも住宅ローンが組める2つのケース
自己破産をしても住宅ローンが組める例には以下のケースがあります。
- 家族名義で申し込む
- 信用情報が回復している
ここからはそれぞれの場合について詳しく解説していきます。
1.家族名義で申し込む
信用情報は個人で管理されるため、家族の信用情報に影響はありません。
たとえば、夫が自己破産をしたとして、その妻や両親の信用情報に傷がなく、かつ返済能力があれば家族名義でローンを組むことができます。
不動産の名義を家族にすることについても、本人の破産歴が障害となることはありません。ただし、家族名義の住宅ローンはその家族に返済の責任が発生するため、今後の家計や資金計画については十分な話し合いが必要です。
2.信用情報が回復している
自己破産をした情報は通常5〜10年は信用情報機関に登録されますが、その期間が過ぎると事故情報は削除されます。
信用情報が回復すれば、過去に自己破産をしたことがあっても新たに住宅ローンに申し込むことは可能です。再スタート後にしっかりと信用を積み重ねると金融機関の信頼が得られ、審査に通る可能性は十分にあります。
もっとも、信用情報が回復した後も住宅ローンの審査基準(収入や勤続年数、他の借入状況など)は変わらないので、自己破産前よりも慎重に資金計画を立て、返済能力を示すことが求められます。
住宅ローン審査で見られる3つのポイント
住宅ローンの審査では、借入希望額や物件の価格だけでなく、申込者の信用力や返済能力などが多角的に評価されます。
中でもとくに重視されるポイントが次の3つです。
- 個人属性
- 返済計画
- 物件情報
それぞれのポイントを詳しく解説します。
1.個人属性
個人属性とは、年齢・職業・勤務先・勤続年数・年収・家族構成・健康状態など個人に関する基本的な情報のことです。
たとえば、安定した収入が見込める正社員で、かつ勤続年数が長い人は金融機関にとって「信用力が高い人」と判断されやすい傾向があります。
また、年齢や勤続年数は長期にわたってローンを返済できるかの判断をするために重要な判断材料です。過去のローン履歴や信用情報も含め、申込者自身の経済的な信頼性を総合的に判断するために個人属性が重視されます。
2.返済計画
金融機関は返済比率(年収に対する年間返済額の割合)をもとに、返済負担が適切かどうかを判断します。
一般的に返済比率は20〜25%程度が目安とされ、住宅ローン以外の借入(自動車や奨学金、カードローンなど)も総返済額に含まれます。
現時点で返済比率の目安よりも高い借入がある(30〜35%以上)場合は審査に通りにくくなる傾向があります。
3.物件情報
住宅ローンの審査では、物件の担保価値や将来的な資産価値も重要な判断材料です。
築年数が極端に古い物件や再建築不可の土地に建つ家は、金融機関が担保価値を低く見積もります。地域の需要やインフラ状況なども含めて評価されることが多く、価値が低いと判断されると融資が通らない可能性もあります。
住宅ローンを組む場合には、物件の条件が金融機関の評価基準を満たしているかを事前に確認しておくと安心です。
自己破産者が住宅ローンを組むには?審査に通りやすくする5つの方法
自己破産を経験した方が住宅ローンに申し込む際は、段階を踏んで慎重に手続きを進めることが大切です。
審査に通りやすくするために行うべきことが5つあります。
- 信用情報を確認する
- 頭金はできるだけ多く用意する
- 自己破産で借金が免責された金融機関以外に申し込む
- クレジットヒストリーを積み重ねる
- 家族名義で申し込む
ここからはそれぞれのポイントを詳しく解説します。
1.信用情報を確認する
繰り返しとなりますが、自己破産をすると5〜10年は住宅ローンを組むことができません。
ブラックリスト入りした状態では金融機関の審査をパスできないので、まずは信用情報が回復するのを待ちましょう。信用情報は開示請求できるので、自己破産から5年経過した方はまずご自身の信用情報を確認してください。
信用情報は以下の方法で開示請求できます。
※2025年6月現在、CICはインターネット開示を休止しています
2.頭金はできるだけ多く用意する
住宅ローンの申し込みをするにあたって、自己資金は多ければ多いほど審査に有利であると考えられています。
頭金を多く用意できれば返済負担率が下がり、返済総額も少なく済みます。金融機関の信頼も上がるので、事故情報が削除されるまでの間は地道にお金を貯めるのがいいでしょう。
3.自己破産で借金が免責された金融機関以外に申し込む
信用情報機関が管理する事故情報は5〜10年で回復しますが、金融機関が独自に管理する情報が5〜10年で更新されるとは限りません。
社内情報として自己破産の事実が残っている可能性があるので、住宅ローンは自己破産時に借り入れしていた金融機関以外で申し込むことをおすすめします。
審査に通りやすくなるという意味では、消費者金融系など銀行以外の金融業者(いわゆるノンバンク)も選択肢の一つです。
ノンバンクは銀行に比べて審査が緩いと言われているので、自己破産をしたことがある方の中にはノンバンクの住宅ローンを検討する方も多いです。ただし、金利が高く返済負担が大きいデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。
4.クレジットヒストリーを積み重ねる
信用情報が回復した後も、金融機関はその後の信用情報を確認します。
クレジットカードや携帯電話の分割払いなど、少額でも期日通りに支払った記録が信用回復のアピール材料となります。この実績はクレジットヒストリーと呼ばれ、再スタート後の信用力を示す上では重要なポイントです。
逆に、クレジットカードやローンの利用実績がまったくないと信用情報に空白期間が生じ、審査側からは「情報が何もない=信用の裏付けが取れない」と判断されることもあります。
自己破産後はまずは少額の利用からでも構わないので、計画的にクレジットヒストリーを積み上げていきましょう。
5.家族名義で申し込む
自己破産の影響が残る間や、信用情報の回復が間に合わない場合には、住宅ローンを家族名義で申し込むという選択もあります。
具体的には、配偶者や親など信用情報に問題のない家族が主債務者となり、本人は連帯保証人や居住者という立場で契約に関与する形です。
この方法は返済責任が家族に生じるため、家計や収支のバランス、家族の同意が欠かせません。また、所有権も名義人である家族のものになるため、将来的な相続や財産分与を見据えたうえで慎重に判断することが大切です。
住宅ローンが払えず自己破産をするとどうなる?
ここからは住宅ローンが返済できず、自己破産をすることになった場合の持ち家や残りのローンの扱いについて解説します。
持ち家は手放すことになる
自己破産をすると、高価な財産である持ち家は当然ながら処分の対象となります。
差し押さえられた住宅は競売にかけられ、売却代金は債権者の債権回収に充てられます。競売は裁判所命令によって行われ、拒否することはできません。
競売の決定後は6ヶ月〜1年の間に退去を求められ、この間に次の住まいを見つけなければなりません。
3回競売にかけても売れなければ、持ち家を手放すことなく住み続けることが可能です。ただし、競売物件は相場よりも安く取引されるため、買取人が見つからないことはほとんどないと思っていてください。
連帯保証人がローンを返済しなければならない
連帯保証人を立てて住宅ローンに申し込んでいる場合、自己破産後の返済義務は連帯保証人へと移行します。
持ち家の売却が決まったとしても、相場の安い競売住宅でローン残高がゼロになることはほとんどありません。
連帯保証人に迷惑をかけないためには、自己破産の手続きをする前に住宅を任意売却することをおすすめします。
任意売却とは、借り入れ先の合意を得た上で、ローンが残っている住宅を売却する方法のことです。競売よりも高く売却できる可能性があるため、連帯保証人の返済負担を軽減できます。
共同名義人が自己破産をするケースについて
夫婦や兄弟など共同名義で所有している住宅は、自己破産者の共有持分のみが差し押さえられることになります。
夫婦で所有している住宅があり、それぞれの持分が1/2であるとします。この場合、どちらか一方が自己破産をすると、1/2だけが競売にかけられるという意味です。
共同名義であっても、自己破産していない側の持分を没収されることはありません。ただし、自己破産した側の持分が競売により買い受けされると、自己破産していない名義人は見ず知らずの人と家を共有することになります。
当初の共同名義であれば、今後の住宅管理や処分方法について話し合いができるでしょう。しかし、競売によって第三者が新たな名義人となれば、自分の家であるにもかかわらず何かと不便がつきまといます。
共同名義の不動産を所有している方は、自己破産の前に共同名義人や専門家と今後についてよく話し合うことをおすすめします。
自己破産以外で借金問題を解決する方法
借金問題を解決する方法は自己破産だけではありません。
住宅ローンの返済が困難な場合に選択肢となる方法は次の3つです。
- 個人再生や任意整理を行う
- 金融機関に相談する
- 任意売却を検討する
それぞれの方法を詳しく解説します。
1.個人再生や任意整理を行う
住宅ローンの返済が困難な時、まず検討したいのが個人再生と任意整理です。
個人再生は裁判所を通じて債務を大幅に減額する方法です。自己破産はすべての借金がなくなりますが、個人再生は5分の1に減額され、残りを3年間で返済していきます。
任意整理は弁護士や司法書士を通じて債権者と交渉し、返済条件を見直す方法です。住宅ローン自体は任意整理の対象になりませんが、その他の借金を減額(主に利息)することで全体の返済負担を軽減します。
どちらの方法もマイホームを維持でき、財産も失わずに済みます。これらは返済計画の立て直しや生活再建に向けた一歩として非常に有効な手段です。
2.金融機関に相談する
住宅ローンに関する困りごとは、借入先の金融機関が相談先となります。
金融機関は返済が困難な債務者向けに対して「リスケジュール(返済条件の変更)」という制度を用意しています。リスケジュールによって返済期間の延長や一時的な元金据え置き、月々の返済額の軽減などが可能です。
金融機関も債務者が完全に返済不能になるよりは、一定の条件で返済を継続してもらう方が望ましいと考えます。誠実に事情を説明することで協力が得られることもあるので、困った時は早期の相談が事態の悪化を防ぐカギとなります。
3.任意売却を検討する
住宅ローンの返済が現実的に難しく、家を維持するのが困難になった場合は「任意売却」も一つの選択肢になります。
任意売却は住宅ローンの残債がある状態で金融機関の同意を得て不動産を売却し、売却代金を返済に充てる方法です。自己破産や競売とは異なり、市場価格に近い金額で売却できるため、残債の軽減につながる可能性があります。
任意売却では引っ越し費用の捻出や交渉によって退去の猶予が得られる場合もあるため、生活再建の準備がしやすいメリットがあります。
住宅を手放すことにはなりますが、今後の経済的な立て直しを考える上で任意売却は前向きな選択肢となるでしょう。
自己破産と住宅ローンにまつわる質問
自己破産と住宅ローンについてお客様から多く寄せられるご質問に回答します。
Q.フラット35は自己破産後でもローンが組みやすいって本当?
審査に通りやすいと言われていますが、確実にローンが組めるわけではありません。
フラット35は民間金融機関ではなく住宅金融支援機構が関与しているため、金融機関と比べて審査基準がやや異なります。
信用情報が回復した後であればローンを組める可能性はありますが、収入や返済負担率、物件条件などの審査対象は変わらないので万全な準備が必要です。
Q.地銀は自己破産後でも審査に通りやすいって本当?
必ずしも有利とは限りません。
地方銀行の中には柔軟な対応をするところもありますが、審査基準は各銀行ごとに異なります。信用情報が回復していても、過去にその銀行と取引があった場合や、独自の社内情報が残っている場合には審査が厳しくなることもあるようです。
Q.共同名義の物件を自己破産するとどうなる?
自己破産者の持分は処分対象になります。
共同名義の住宅であっても、自己破産者が所有している持分は「破産財団」に組み入れられ、原則として売却されます。もう一方の名義人がその持分を買い取ることで家を守ることも可能ですが、任意売却や競売になることも考えられます。
共有名義で住宅を所有している場合は、早めに専門家に相談することが大切です。
まとめ
過去に自己破産をした経験があると、住宅ローンの審査にどのような影響があるか不安を感じるものです。
自己破産をしても、一定期間が経過しブラックリストから削除されればローンが組めるのでその点はご安心ください。
購入済み住宅のローンが返済できずお困りの方は、できるだけ早く専門家に相談しましょう。一人で悩んでいても返済日は待ってはくれません。
当事務所では、これまでに数々の借金問題を解決してきた実績があります。自己破産はもちろん、ご相談内容に応じて任意整理や個人再生なども対応可能です。
一人ひとりのご相談者様に合った最善の方法をご提案しますので、ローンの返済でお困りの方はぜひお気軽に問い合わせください。