借金には時効がありますが、ただ時間が経過するのを待つだけでは時効は成立しません。
時効を認めてもらうには、時効期間が経過したタイミングで「援用」と呼ばれる手続きを行う必要があります。
時効の援用は自分でも手続きできますが、タイミングや話し合いの内容によっては失敗に終わってしまうこともあります。
失敗すると時効を認めてもらえないだけでなく、借金を全額返済しなければなりません。
本記事では時効の援用でよくある失敗例をまとめました。時効の援用の成功率や失敗した場合の対処法なども解説するので、自分で手続きしようとお考えの方はぜひお読みください。
目次
時効の援用でよくある3つの失敗例
時効の援用でよくある失敗例には次のものがあります。
- 時効期間を経過していないのに手続きしてしまった
- 裁判を起こされていた
- 債務の承認をしてしまった
ここからは具体的な内容を解説します。
例1.時効期間を経過していないのに手続きしてしまった
時効の援用の失敗例でとくに多いのが、時効期間を経過していないのに手続きしてしまうケースです。
借金の時効は5年または10年ですが、この期間は「最終返済日」から起算します。
たとえば2000年に消費者金融に借金をして、最後に返済したのが2010年だったとしましょう。この場合、時効が成立するのは最終返済日から5年後の2015年です。
時効の援用を自分でやろうとして失敗した例には、最終返済日ではなく借入を起こした日から起算してしまうケースがあります。
中には本人が返済した自覚がなく、まだ時効が完成していなかったという失敗例もあります。
例2.裁判を起こされていた
借金の返済を求めて債権者が訴訟を起こしていた場合、その時点で時効はストップします。
訴訟に負け、裁判が確定すると時効は裁判の確定日から新たにスタートすることになります。
訴訟を起こされると裁判所から書類が届くのですが、引っ越しなどで住所が変わっていると本人が知らないうちに訴訟を起こされていた…というケースも。
この場合、本人が出廷せず自動的に敗訴となってしまいます。
また、消費者金融からの借金は時効期間が5年ですが、裁判が確定すると時効は10年になり、そこから時効期間が経過するのはなかなか難しい部分でもあります。
例3.債務の承認をしてしまった
債務の承認とは、ひと言で言うと「借金を認めること」です。
たとえば、時効が成立しているにもかかわらず債権者が返済を求めてきたとしましょう。これに対し「支払う」などと約束すると借金の存在を認めたことになり、時効がリセットされてしまうのです。
ほかにも、債権者に対して返済スケジュールの相談をすることも債務を承認したと判断されることがあります。
時効の援用の成功率は90%以上って本当?
時効の援用は、次の条件をすべて満たしていれば成功します。
- 時効期間が経過している
- 裁判を起こされていない
- 債権者と連絡を取り合っていない
反対に、上記を満たしていなければ時効の援用は失敗に終わる可能性があります。
1と3については自力で調べることができますが、2を明らかにする具体的な方法はありません。
債権者も裁判する会社・裁判をほとんどしない会社と対応が分かれるため、やってみないとわからない部分も大きいです。
時効の援用は念入りな調査が成功率を上げるので、時効の援用を検討中の方は借金問題に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。
時効の援用に失敗したらどうなる?
時効の援用が失敗に終わった場合、残された道は次の2つです。
- 借金を全額一括で返済する
- 債務整理をする
ここからは具体的な内容を解説します。
1.借金を全額一括で返済する
時効の援用に失敗すると、特別な理由がない限り残りの借金を全額、しかも一括で返済しなければなりません。
借金には元金+損害遅延金が含まれるので、返済が滞っていた期間が長ければ長いほど金額は大きくなります。
一括で返済できなければ、分割払いに対応してもらえるかどうか債権者に交渉することは可能です。(交渉が成立するとは限りません)
2.返済が困難であれば債務整理を検討する
借金返済が困難であれば、弁護士や司法書士に相談の上で債務整理を検討します。
債務整理には任意整理や個人再生、自己破産などいくつか種類があります。
任意整理 | 将来利息を除いた元金のみを分割で返済する方法。月々の返済負担が軽減される。 |
個人再生 | 借金を大幅に減額し、残りを原則3年で返済する方法。借金を1/5程度に減額できる。 |
自己破産 | 借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらい、借金の支払義務を免除してもらうこと。必要最低限の財産以外は処分される。 |
任意整理は利息がカットされた元金のみを分割し、月々の返済負担を軽減する方法です。裁判所は介入しないので、財産を手放す必要はありません。
その他の方法に比べるとリスクとデメリットが少ない方法と言えます。
個人再生は裁判所に申し立てて、返済総額を減額してもらえるよう再生計画を立てる手続きのことです。財産を所有したまま手続きできるのが大きな特徴です。
減額しても返済が困難ということであれば、自己破産で借金を全額免除してもらう方法もあります。ただし、自己破産をすると財産は処分されるので、持ち家や車などは手放さなければなりません。
どの方法が最善かは弁護士や司法書士に相談し、決定するのが一般的です。
時効の援用に失敗したら債権者から連絡が来る?
時効の援用に失敗すると、債権者からその旨を知らせる連絡が入ります。(自分で行った場合は本人宛て、専門家に依頼した場合は代理人宛て)
弁護士や司法書士が連絡を受けた場合、どのような理由で時効が成立していないのかを確認します。状況次第では証拠資料の提出を求めることもあります。
ここで一つ注意しなければいけないのが、時効が成立していないことを認めた時に債権者が一括返済を求めてくるという点です。
借金の額や経済状況によっては、一括返済は難しい場合もあるでしょう。
この時、相手の要求をすべて受け入れる形で話を進めると、本人にとっては非常に不利な状況へと陥ってしまいます。
時効の援用に失敗すると、残された手段は借金を返済するか債務整理をするかの二択です。
債務整理をするにも法律の知識が必要なので、困った時は一人で悩まずに専門家へ相談することをおすすめします。
時効の援用は自分でやると失敗のリスクが高くなる?
成功率について言えるのは、専門家に依頼するのと自分でやるのとでは結果に大きな差があるという点です。
まず時効の援用を成功させるには、
- 時効期間が経過している
- 裁判を起こされていない
- 債務を認めていない
この3つをクリアしていることが大前提となります。
時効期間が経過しているかどうかは、手がかりになる書類があれば判断可能です。借金問題に理解のある弁護士や司法書士であれば、ほぼ確実に有利な方向へ進められるでしょう。
一方で、過去に裁判を起こされたかどうかは不明な部分もあり、専門家であっても100%成功するとは断言できません。(多くのサイトで成功率90%と言われているのは、このあたりが理由だと考えられます)
さらに言うと、専門知識のない方がネットの情報をもとに見よう見まねで手続きしても、債権者から何か言われた時に適切に対処できるかと言われれば少々難しいかもしれません。
時効の援用で失敗を回避するには専門家に相談を
時効の援用は、手続きを行うタイミングや裁判の有無次第で真逆の結果になるものです。
成功すれば債務から解放されますが、失敗すると全額返済を求められます。返済が難しければ債務整理を行わなければならず、状況によっては財産を失うこともあります。
時効の援用で失敗を防ぐには、自分で手続きせずに借金問題のプロに依頼するのが賢明です。
大阪のりらいふ法務事務所は借金問題に強い司法書士事務所です。時効の援用を検討中の方はいつでもお気軽にお問い合わせくださいませ。