借金の返済が困難になった時、返済の負担を軽減する方法の一つに「任意整理」という手段があります。
任意整理は、自己破産や個人再生に比べて手続きが簡単で、財産を手放すことなく月々の返済額を減額できます。
「自分の借金は任意整理の対象になる?」
「任意整理を依頼すると費用はいくらかかるの?」
このような疑問を解消するため、この記事では任意整理の基礎知識についてわかりやすく解説していきます。
目次
任意整理とは|借金の返済額を減額できる救済制度のこと
任意整理とは、債権者(借入先の金融機関)に対して借金の返済額を減額するよう交渉し、和解を成立させる手続きのことです。
債権者が合意すれば、利息がカットされた元金のみ返済することになります。元金の分割金額も改めて計算されるので、月々の返済負担が軽くなるメリットがあります。
自分は任意整理できるかわからないという方は、以下に当てはまるものがあるかをチェックしてみてください。
- 複数の金融機関から借入している
- 借金の総額が年収の1/3以上である
- 2ヶ月以上返済が滞っている
- 返済が間に合わないことがある
- 返済のために借金をすることがある
- 借金の残高が減らない
1つでも当てはまるものがある場合、すでに自力で完済することが難しくなっている可能性があります。これ以上借金を増やさないためには、何らかの方法で借金問題を早期に解決する必要があるでしょう。
任意整理は、いくつかある債務整理の方法の中でもっともリスクが少ない方法です。自己破産や個人再生のように裁判所を介する必要がなく、比較的簡単に手続きができます。
財産を失ったり職業や資格を制限されることもないので、その他の方法に比べてデメリットの少ない手段と言えます。
任意整理は、弁護士や認定司法書士に依頼するのが一般的です。自分で債務整理を行うこともできますが、ある程度の知識がなければ交渉が難航し、債権者から相手にしてもらえないことも多いです。
借金問題でお悩みの方は、任意整理をすべきかどうかも含めて専門家に相談することをおすすめします。
任意整理できるケース
任意整理は、借入先や借入理由を問わずどんな借金も対象となります。
任意整理の対象となる具体例は次の通りです。
- カードローン(銀行・クレジットカードどちらも可)
- キャッシング
- 住宅ローン
- 自動車ローン
お金を借りている事実があれば、基本的には任意整理ができると理解して問題ありません。
任意整理できないケース
無職や無収入の方は、残念ながら任意整理はできません。
任意整理で減額されるのは、基本的には利息のみです。元金の返済義務は残るため、月々の返済自体は継続します。
つまり、無職や無収入によって元金の返済能力がないとみなされると任意整理はできないのです。
ただし、本人は無職であっても家族に十分な収入があれば任意整理は可能です。具体例としては、夫に安定した収入がある専業主婦の場合などがあります。
任意整理の4つのメリット
任意整理には、月々の返済額を減額する以外にも以下のようなメリットがあります。
- 住宅や車などの財産を残せる
- 手続き中は督促がストップする
- 準備する書類が少ない
- 家族に知られず手続きできる
メリット①住宅や車などの財産を残せる
「債務整理をすると財産が差し押さえられる」というイメージがありますが、任意整理をしたからといって全ての財産が差し押さえられるわけではありません。
というのも、任意整理では整理する借入先を自分で選ぶことができるからです。
例えば、A社(自動車ローン)・B社(カードローン)・C社(キャッシング)の3社から借入しているとします。車を手放したくない場合、B社とC社のみ任意整理をすれば、車を残したまま月々の返済額が減額できるのです。
メリット②手続き中は督促がストップする
任意整理を行うと、弁護士・認定司法書士から債権者(借入先の金融機関)に対し受任通知が送付されます。
受任通知には、取り立てや督促を停止させる法的効力があるため、債権者は債務者に対して返済を直接要求することができなくなります。
債権者の取り立て停止については、賃金業法第二十一条九号に記されています。
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
督促・取り立ての停止は、任意整理の手続きが完了するまでの一時的なものです。ただし、返済しない期間ができることで気持ちに余裕が生まれる点は、任意整理の大きなメリットと言えるでしょう。
メリット③準備する書類が少ない
任意整理では、裁判所が関与しないため必要書類がそれほど多くありません。
任意整理する場合、必ず準備しなければいけないものは次の2点です。
- 本人確認書類(免許証、健康保険証、パスポートなど)
- 印鑑
上記以外にも、交渉をスムーズに進めるために以下の書類の提出を求められることがあります。
- 収入を証明する書類(給与明細、課税証明書、源泉徴収票など)
- 預金通帳
- 借入先からの通知書類(契約書、借用書、督促状、内容証明郵便など)
- 財産や資産がわかるもの(不動産登記簿謄本、車検証など)
必須3点以外は任意整理を依頼する事務所や借入金額によって異なるため、詳細は専門家に確認しましょう。
メリット④家族に知られず手続きできる
任意整理をしたからといって、その事実が家族に通知されることはありません。
任意整理は、弁護士や司法書士に依頼すれば必要な手続きはすべて代行してもらえます。必要なやりとりは携帯電話で行い、書類の受け渡し場所も事務所にすれば、家族に知られず手続きを進めることが可能です。
任意整理の2つのデメリット
任意整理にはさまざまなメリットがある一方で、次のようなデメリットがあることも覚えておきましょう。
- ブラックリストに載る
- 債権者が同意しなければ任意整理できない
デメリット①ブラックリストに載る
任意整理を行うと、信用情報機関にその記録が残ります。
いわゆるブラックリストに情報が登録されるので、任意整理後は約5年にわたり一切の借入ができなくなります。
ブラックリストから削除されるまでの間は、自動車や住宅ローンを組むことはもちろん、クレジットカードの更新もできません。
デメリット②債権者の同意がなければ任意整理できない
任意整理は、債権者の同意があることが大前提です。
債権者に対して法律上の強制力を持つものではないため、債権者がNOと言えば任意整理は成立しません。
任意整理にかかる費用と期間
任意整理を弁護士や認定司法書士に依頼すると、着手金や報酬が発生します。
また、手続きが完了するまでにある程度の時間もかかるため、任意整理を検討している方は費用や期間について知っておく必要があるでしょう。
①費用|1社あたり4〜5万円が相場
弁護士や司法書士に任意整理を依頼する場合、借入先1社につき40,000〜60,000円ほどの費用がかかります。
費用の内訳は以下の通りです。
- 相談料
- 着手金
- 解決報酬金
- 減額報酬金(減額できた金額の10%)
加えて、過払い金を回収できた場合は回収額の20〜25%が追加報酬として請求されることがあります。
任意整理にかかる費用は、弁護士・司法書士事務所によって大きく異なります。日本司法書士会連合会の「債務整理事件における報酬に関する指針」では1社5万円が上限となっております。
②期間|交渉に3〜6ヶ月、返済は3〜5年が平均
債権者と直接交渉をする任意整理は、手続きが完了するまでに3〜6ヶ月の期間を要します。
具体的な流れは以下の通りです。
- 弁護士や司法書士などの専門家に相談する
- 債権者に対して受任通知を送ってもらう
- 債権者からの督促・取り立てがストップする
- 債権者から取引履歴が届く
- 利息の引き直し計算をもとに和解交渉をする
- 債権者が合意する
- 任意整理完了
すぐに交渉が成立する場合もあれば、対応が遅くなかなか合意に至らないこともあり、債権者次第では手続きに6ヶ月以上かかることもあります。
ちなみに、任意整理の手続き中は督促や取り立てがストップするので、返済の必要はありません。
任意整理後は、3〜5年(36〜60回)かけて返済するのが一般的です。
借金の額が大きい、あるいは返済能力が低い場合は5年以上の長期返済が可能となるケースもありますが、長期返済ができるかどうかは、任意整理をする前の取引内容や弁護士・司法書士の交渉力によって左右されるところが大きいです。
任意整理後の生活への影響
任意整理をしたからといって、今までの生活が大きく変化することはありません。
唯一不便なことがあるとしたら、住宅や自動車の購入時にローンが組めなくなることでしょう。任意整理をした事実は事故情報としてブラックリストに記録されるので、削除されるまでの約5年間はローンでの買い物ができなくなります。
任意整理は裁判所が関与しないので、家族はもちろん勤め先に知られることなく今まで通りの生活が送れます。財産を処分されることもないですし、引越しや旅行が制限されることもありません。
任意整理が完了すれば、月々の返済負担は軽減できます。完済までの期間も短縮されるため、返済のゴールが見えて精神的に余裕が持てるようになるはずです。
そのため、借金したことを反省し、お金の使い方を見直すいいきっかけにもなります。借金に対する考え方を改められると前向きに捉え、気持ちを一新して完済を目指していきましょう。
まとめ
借金が返済できなくなり、督促状や取り立て通知が届いて不安を感じている方は、まず専門家に相談することをおすすめします。
借金問題は、自己破産をせずに解決できるケースがほとんどです。事実、多くの依頼者様が任意整理によって借金のお悩みを解決されています。
「借金が増えて返済に困っている」「月々の返済額を減らしたい」という方は、ぜひ当事務所までご相談ください。債務整理のプロが、相談者様一人ひとりに合った方法をご提案させていただきます。