長く滞納を続けた借金について、裁判所から手紙が届いたとご相談をいただくことがあります。
訴状を受け取ると「どうすればいいかわからない」「もう時効の援用はできないのか?」と不安な気持ちが強くなるものです。
そこで本記事では、裁判所から手紙が届いた場合の対処法をわかりやすく解説します。借金が時効を迎えたかどうかの確認方法も説明するので、借金でお困りの方はぜひお読みください。
目次
長年払っていない借金で裁判を起こされた!時効は認められない?
借金の返済が滞ると、債権者による督促や取り立てが行われます。
返済に応じない場合、裁判所から支払督促や訴状などの書類が届くことがあります。
支払督促 | 債権者の申立てにもとづき、裁判所が債務者に対して支払いを命ずる書面のこと |
訴状 | 原告の訴えの内容を記した書面のこと。借金問題の場合は契約内容や借りた金額、請求額などが記載される |
支払督促が届いてもなお返済に応じなければ、仮執行宣言がなされ給与や貯金などの財産が差し押さえられます。
借金には時効があるため、5〜10年我慢して合法的に踏み倒したいと考える方もいるでしょう。
確かに、借金は時効を迎えると返済義務がなくなりますが、ただ時間が経つのを待っているだけでは時効は成立しません。
「時効の援用」をしなければ借金の時効は成立しない
借金の時効を成立させるには「時効の援用」と呼ばれる手続きが必要です。
時効の援用を行うには、まず最後に借金を返済した日にちを確認しなければなりません。(借金の時効は最終返済日から起算するため)
最終返済日を確認したら書類を作成し、債権者に内容証明郵便で送付します。手続き完了までには早ければ2週間、遅くとも1ヶ月の時間を要します。
この一連の流れなくして、借金が自動的に時効を迎えることはありえないのです。
なお、滞納中の借金について裁判を起こされた場合も、適切に対処すれば時効を成立させることは可能です。
時効期間が経過していても訴訟を起こす会社はある
借金の時効は援用手続きを行わない限り、自動的に成立するものではありません。
よって仮に時効期間が経過したとしても、債権者は取り立てをしたり裁判を起こすことができます。
時効を主張せず裁判も放置すると、時効の援用をしていれば帳消しにできるはずだった借金を支払わなければいけなくなります。
裁判所から手紙が届くと不安な気持ちになりますが、慌てずに対処すれば時効を成立させることが可能です。
時効が成立すれば裁判は取り下げられるケースがほとんどなので、裁判所から支払督促や訴状が届いた場合は速やかに専門家へ相談しましょう。
裁判所から訴状が届いたら?2つの対処法
滞納中の借金について、裁判所から訴状が届いた時の対処法は①裁判を取り下げられる場合②裁判を取り下げられない場合の2パターンに分けられます。
どのような方法かそれぞれのパターン別に解説します。
①裁判を取り下げられる場合の対処法
裁判所から訴状が届いたら、まずは裁判所と債権者に答弁書※を提出します。(郵送またはFAX)
答弁書にて時効の援用を主張し、債権者が認めた場合は裁判は取り下げられます。裁判が取り下げられると、債権者が再び請求してくることはまずありません。
(訴えの取下げの効果)
第二百六十二条 訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
引用元:民事訴訟法
裁判が取り下げられた後は、時効が認められた証拠を残すために以下いずれかの対処をすると安心です。
- 内容証明郵便を送付する
- 契約書の返還を求める
- 債務不存在証明書の発行を依頼する
- 債権債務がないことを示す確認書や和解書の作成を依頼する
※訴えられた側(被告)の言い分をまとめた書類のこと
②裁判を取り下げられない場合の対処法
時効の援用を主張しても、債権者が債務名義※があると回答すれば、判決や支払督促が確定した日から10年は時効が成立しないことになります。
その時点で10年が経過していなければ時効は成立せず、この場合は債務整理で対処しなければなりません。
具体的には、分割で返済できるようであれば任意整理、返済自体が難しければ自己破産といった方法があります。
滞納した期間が長いと利息が増え、返済額が高額になりがちです。一括返済で減額に応じる債権者もいますが、減額対応については債権者によって大きく異なります。
なお、裁判が取り下げられないケースでは期日に裁判所に出頭する必要があります。
※返済を請求できる権利を実行していいとする文書のこと
借金が時効かどうかを確認する方法
借金の時効が成立しているかどうかを債権者に確認し、成立している場合のみ手続きを進めるというのはあまり現実的ではありません。
なぜかというと、一度債権者に連絡を取ってしまうと、時効が成立していなかった場合に返済することを前提に話し合いをしなければならないからです。
そもそも「時効かどうか知りたい」と問い合わせを受けた時点で、債権者は当該の契約について調べるはずです。そこで時効を迎えていないことがわかれば、相手は確実に返済を求めてくるでしょう。
借金の時効は自分で調べようとせず、時効の援用に慣れている専門家に相談するのがおすすめです。知識のある専門家であれば、債権者から送付された書類と相談者様のお話から時効の援用が成功するかどうかの判断ができます。
時効の援用前に裁判されているかを確認する方法
時効の援用を行う場合、債権者が債務名義を取得していると10年間は時効が成立しません。
このことから「時効の援用前に裁判されているかどうかを確認したい」といったご相談をいただくのですが、残念ながらそれを調べる具体的な方法はありません。
唯一手がかりとなるのが、債権者から送られてきた書類です。もしも事件番号や裁判所の表示があれば、過去に裁判されていることを意味します。
事件番号がある=過去に裁判されている
事件番号とは、それぞれの裁判に割り振られる番号のことです。
事件番号がわかれば事件記録を裁判所で閲覧することができ、判決確定から10年が経過しているかどうかを確認できます。
債権者に自ら確認すると時効の援用ができなくなる可能性がある
時効の援用前に裁判されたかを探る手がかりとして事件番号の有無をあげましたが、結論から言うと債権者からの手紙には裁判に関する情報は記されていないケースが多いです。
債権者に裁判について確認することは可能ですが、その時点で債務を認めてしまえば時効を主張することはできなくなるでしょう。
時効の援用は専門家に相談するのがおすすめ
時効の援用は手続きそのものはシンプルですが、タイミングや話し合い次第では失敗のリスクが高まります。
知識や経験のない方が無理に手続きするよりも、借金問題に詳しい専門家に依頼した方がより高い確率で時効の援用を成功させられます。
「借金滞納で裁判所から訴状が届いたがどうすればいいかわからない」「時効の援用を検討している」といった方は、できるだけ早く専門家に相談しましょう。
りらいふ法務事務所は大阪で借金問題を専門に取り扱う司法書士事務所です。徹底したサポートで一人ひとりに合った最善の方法をご提案いたしますので、借金でお困りの方はお気軽に当事務所までお問合せください。