家族や知人が借金をする時、その人が何らかの理由で返済できなくなったとすると連帯保証人が代わりに返済する義務を負います。
何の気なしに、または断りきれず連帯保証人になった結果、債権者から返済を求める書面が届いたというご相談を受けることがあります。
借金は返済が滞ってから一定期間が経過すると時効が認められるのですが、この時効は連帯保証人にも認められるのでしょうか。
結論から言うと、連帯保証人も借金の時効援用は可能です。ただし、時効援用を行うにはいくつかの条件があります。
本記事では、連帯保証人の時効援用についてわかりやすく解説しています。
連帯保証人による時効援用のよくある事例も説明するので、連帯保証人になり請求を求められている方はぜひ参考にしてください。
目次
連帯保証人も借金の時効援用は行える
主債務者が何らかの理由で借金を返済できなくなった時、債権者は連帯保証人に対して請求を行います。
借金は一定期間が経過すると時効を迎えるのですが、主債務者から連帯保証人に返済義務が移った場合は連帯保証人が時効援用を行うことができます。
そもそも連帯保証人とは?
保証人は、①通常の保証人②連帯保証人の2種類に分けられます。
通常の保証人は、主債務者の財産が差し押さえられてもなお返済できない場合に主債務者に代わって返済の義務を負う立場の人です。
これに対し連帯保証人は、主債務者の状況にかかわらず、債権者から請求されれば反論できず主債務を全額返済しなければなりません。
保証人としての責任は連帯保証人の方が大きいのが特徴であり、現在の日本で借金をすると連帯保証人が採用されるケースがほとんどです。
つまり、主債務者が返済できない時は連帯保証人が否応なしにすべての借金を返済しなければいけなくなるというわけです。
主債務と連帯保証債務の関係
連帯保証人の時効は主債務者の時効に付随するため、主債務の時効が成立すれば連帯保証債務の時効も成立することになります。
反対に、主債務が債務を承認するなどして時効が更新されれば、連帯保証債務の時効も更新され、時効期間が新たにカウントされます。
ここで一つ重要なポイントとして理解しておきたいのが、付従性の関係は「連帯保証債務が主債務に対して持つ特性」であるという点です。
わかりやすく説明すると、主債務の時効が成立すれば連帯保証債務の時効も成立しますが、連帯保証人が時効援用に成功したとしても主債務者の返済義務はなくなりません。
また、主債務と連帯保証債務はそれぞれ異なる債務ですが、保証人はどちらの債務に対しても時効援用を行えます。
連帯保証人が時効援用を行うための2つの条件
連帯保証人が時効援用をするには、次の2つを満たしていることが条件となります。
- 主債務者の最終返済日から5年以上が経過している
- 時効の更新(中断)がない
ここからは上記の条件を具体的に解説します。
条件1.主債務者の最終返済日から5年以上が経過している
時効援用を行うには、主債務者が最後に返済した日から5年以上経っていることが条件となります。
この条件は、主債務者と連帯保証人どちらが時効援用を行う場合も同じです。
2020年4月の民法改正では「主観的起算点から5年、または客観的起算点から10年」という項目が追加されました。
この場合は、①債権者が借金の請求権を行使できることを知った時(主観的起算点)②債権者が借金の請求権を行使できる時(客観的起算点)のいずれか早いタイミングで考えます。
条件2.時効の更新(中断)がない
時効援用を行うには、時効の更新(中断)がないことも条件となります。
条件1でお伝えした通り、借金の時効は主債務者が最後に返済した日を起点に考えます。
この間に借金の一部を返済するなど、債務の承認にあたる行為をすると時効は更新され、その時点から時効期間が再スタートしてしまうのです。
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。”
引用元:民法
債務の承認以外にも、裁判所が支払督促の通知書を送付したり、財産の差押え(仮差押えや仮処分も含む)が行われたりすることも時効の更新事由にあたります。
時効期間が更新されると、そこから数えて5年経過しなければ時効援用はできません。
連帯保証人は単独で時効援用できる
主債務者が時効援用を行わなくても連帯保証人は時効援用ができます。
主債務と連帯保証債務はそれぞれ別の債務と考えるため、連帯保証人は主債務者の対応にかかわらず自分の判断で時効援用を行って問題ありません。
もし主債務者が長年借金を返済していないようであれば、早めに時効援用を検討した方がいいでしょう。
時効援用のやり方については、借金問題に詳しい専門家に相談することをおすすめします。大阪で時効援用を検討中の方は【りらいふ法務事務所】までお問い合わせください。
【状況別】連帯保証人による時効援用の事例
ここからは、連帯保証人による時効援用を状況別に詳しく解説します。
ケース1.時効期間が経過する前に主債務者が債務を承認した場合
連帯保証人が時効援用を行うには、債務の承認がなされていないことが条件となります。
債務の承認とは、ひと言で説明すると「借金があることを認める行為」のことです。
たとえば、長期間滞納を続けた借金について、債権者が主債務者に対して返済を求められたとしましょう。この時、返済する意志があると判断されるような行為をとると債務の承認だとみなされてしまいます。
債務の承認をすると時効期間が更新されるので、その時点から5年間は時効援用を行うことができません。
連帯保証債務は主債務に対して付従性の関係であるため、連帯保証人も当面は時効援用ができなくなってしまいます。
ケース2.時効期間が経過した後で主債務者が債務を承認した場合
ケース1では時効期間が経過する前の時効援用について説明しましたが、すでに時効期間が経過している場合についても解説します。
時効期間が経過した後に主債務者が債務を承認しても、原則として連帯保証人が返済の義務を負う必要はないとされます。
その理由は、時効期間を迎えた後で債務を承認しても、その効果は連帯保証債務には及ばないためです。
すでに時効が成立しているので、連帯保証債務の時効援用を行えば返済を免れることができると考えていいでしょう。
ただし、過去には時効成立後の債務の承認を認めなかった判例があります。(いったん債務を認めたにもかかわらず、時効援用を行うことは債権者の信頼を裏切ることになるという理由から)
この状況で時効援用できるかどうかは、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
大阪で時効援用の専門家をお探しの方は【りらいふ法務事務所】までお問い合わせください。
ケース3.時効期間が経過する前に連帯保証人が債務を承認した場合
ケース1と同様に、時効期間が経過する前に連帯保証人が債務を承認した場合も時効援用は行えません。
このケースにおいては、債務の承認によって時効が更新されるのは連帯保証債務のみです。よって主債務の時効は中断せず、そのまま進行していきます。
時効前に連帯保証人が債務の一部を返済したとしても、主債務者が滞納したまま5年以上経過していれば主債務の時効は成立します。
この時点で連帯保証人が主債務の時効援用を行えば、返済を免れることができるのです。
ケース4.時効期間が経過した後で連帯保証人が債務を承認した場合
こちらはケース2と同様に考えます。
時効期間が経過した後であれば、基本的には返済の義務はなくなります。しかし、過去には時効援用が認められなかった判例もあるので「絶対にできる」と断言はできません。
どうすべきか困った時は、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。
連帯保証人の時効援用はりらいふ法務事務所へおまかせください
借金の連帯保証人になった方から、ある日突然返済を迫る書面が届いたというご相談をいただくことがあります。
連帯保証人は通常の保証人よりも責任が重く、主債務者と同じようにすべての債務を追わなければなりません。
ただ、その借金が何年も前のものであり、主債務者が長期にわたって滞納していれば時効援用できる可能性があります。
時効援用を成功させるには、借金問題のプロに相談するのがもっとも有効な方法です。私たちは時効援用をはじめさまざまな借金問題を解決に導いてきました。
連帯保証人としてお困りのことがあれば、りらいふ法務事務所までご相談ください。
無料相談はこちらから